大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)3457号 判決

被告人 田辺吉太郎 外

〔抄 録〕

論旨第一、二点について。

被告人田辺が山梨県北巨摩郡韮崎地区衣料品小売商業協同組合の理事長(組合長とも称す)として同組合の為衣料品の仕入や仕入れた衣料品を各組合員に配分する等の組合事務の責任者であつたことは本件記録によつて明白である。而して被告人が、山梨県庁から交付された木綿手拭の割当証明書によつて、各組合員に配分すべき木綿手拭三五〇四枚を仕入れ、これをその頃肩書自宅で被告人小林保治に五〇〇枚(同被告人に対する割当数量は二〇三枚)、被告人横内富三に五〇〇枚(同割当数量は一〇四枚)、被告人小林巖に五〇〇枚(同割当数量は一一一枚)を各配分し、残余を自己の配分として取得したこと(同割当数量は二〇〇枚)は原審が取り調べた証拠によつてこれを認めるに十分である。しかし乍ら、同組合においては予て組合員が、組合から配分された物品に対する代金の支払が不良であつて、組合の収支が、赤字になつており、右手拭を仕入れるに当つて組合にその資金がなかつた為、被告人が自から代金を立替えて甲府市の問屋樋口から右割当証明書によつて仕入れたものであることが、原審並びに当審において取り調べた証拠によつて明白である。

果してしからば右手拭三五〇四枚が、有効に組合員全員の共有に帰したものであるかどうか明確ではないのである。従つて被告人がこの手拭を組合員全員にその割当数量に応じた数量づつを按分配給せず、前述の如くに組合員の一部の者に対しその割当数量以上に配分したからというて、これは被告人の任務に背く行為であり、又割当数量以上に配分した点は木綿製品に配給統制の行われていた当時においては統制違反行為であつたことはいうまでもないところであるけれども、未だ不正領得行為ありとは確認するに足らないところである。何となれば組合が被告人に立替えた代金を支払う迄は手拭に対する権利は被告人にあるものとも解せられるからである。

よつて被告人の右所為を横領罪に該当するものと認めた原判決は結局事実を誤認したものというべきであつて、この誤認はもとより判決に影響を及ぼすものであるから、論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。

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